PISAってなに?
どんな組織で何をしている?

2021.06.08

日本の学力低下がニュースになったことを覚えている方も少なくないでしょう。キーワードとなるのが「PISA(ピサ)」という学力基準です。新聞やテレビなどで目にした記憶があるかもしれません。しかし、PISAとは一体どんなものなのでしょうか。今回は、PISAについて詳しく解説します。

PISAとは、国際学力調査のこと

それでは早速、PISAの概要を説明していきましょう。

まず、PISAとは「Programme for International Student Assessment」の略称。日本語でいうと、「生徒の学習到達度調査」のことです。

OECDが3年おきに実施する

PISAは2000年にスタートした調査で、OECD(経済協力開発機構)によって3年ごとに行われます。

OECD加盟国のみならず、世界中の15歳の生徒(日本では高校1年生)が対象。社会に出るのに十分な知識や技能がどれぐらい身についているかを、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3つの分野において判定します。

PISAの目的

文部科学省によると、PISAの目的は「義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る」こととされています。

知識や技能そのものというよりは、実践に生かせるかどうかの応用力が問われます。

PISAの内容はどんなもの?

PISAの調査内容とは具体的にどのようなものなのでしょうか。文部科学省のホームページには、「読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野(実施年によって、中心分野を設定して重点的に調査) あわせて、生徒質問紙、学校質問紙による調査を実施」と記載されています。

問題例を紹介

PISAの問題は多岐にわたり、また出題の傾向も変わる可能性があるので、あくまでも参考として例を紹介しましょう。

読解力の問題では、文章や図表などから読み取れる内容が問われます。たとえば、島に関するデータや落書きに関する文章など、ブログに書かれてある内容やグラフの情報などをもとに、設問に回答するという流れです。

数学的リテラシーでは、為替レートや盗難事件発生数などの数値データが表示され、そのデータをもとにした問題が提示されます。

科学的リテラシーの分野では、温室効果や酸性雨など、理科系の文章・図などの内容から出題されます。記号で回答する問題もありますが、自分の言葉を文章にして回答する問題もあり、表現力も必要です。

PISAの調査結果は?日本はどう?

実際にPISAの調査結果はどのような状況なのでしょうか。2018年は、読解力の分野に重点を置いて調査が行われました。結果について細かく見ていきましょう。

日本の順位が下落

日本は、読解力の分野における得点が504点で、OECDの平均点である487点を上回りました。ところが、世界順位で見ると、2015年の調査時の8位から2018年には15位と大きく下落しました。

また、数学的リテラシーは5位から6位に、科学的リテラシーは2位から5位にダウンしています。

下落の理由

PISAにおいて、読解力とは「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」と定義されています。

日本の読解力の順位が下がってしまった原因として、国立教育政策研究所の見解によれば、日本の生徒たちは自らの意思を他者に伝達するスキルに課題があるということです。また、2015年の調査から紙ではなくコンピュータでの出題に変わったため、新しい出題方式への不慣れも原因の1つといわれています。

他国の状況は?

PISAには世界中の国が参加しているため、すべての国の結果について触れることはできませんが、一部の国の状況について紹介しましょう。

アルバニア、コロンビア、マカオ(中国)、モルドバ共和国、ペルー、ポルトガル、カタールの7つの国や地域においては、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーすべての分野でパフォーマンスの向上が見られました。

一方、オーストラリア、フィンランド、アイスランド、韓国、オランダ、ニュージーランド、スロバキアの7つの国と地域では、全分野でパフォーマンスの低下が確認されています。

PISAの結果を受けて教育は変わる?

PISAの結果は学習指導要領に影響するといわれています。実際に、2008年の改訂時には思考力・判断力・表現力等の育成などが盛り込まれました。しかし、調査方法の変更などもあり、専門家の間では、PISAの結果だけで習熟度を測るのは難しいという意見もあります。

なお、PISA以外に、IEA(国際教育到達度評価学会)によって行われる「TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)」という理数系の国際学力調査もあります。

PISAは教育にも影響する可能性がある

PISAは世界的に行われる大規模な調査であることがわかりました。日本は順位が下落したため学力が低下していると話題になりましたが、問題点もあり、PISAの結果のみで日本の生徒たちの学力を測ることは危険だとも考えられます。

教育現場の実態と照らし合わせながら、子どもたちにとってより良い環境の中でのびのびと学べることが理想でしょう。